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わたしたちの視点

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IDJJJ3 Creators! 宮前 陽 作品紹介

宮前 陽(みやまえ あきら)
KASUGAMARU アートディレクター/グラフィックデザイナー
和歌山県海南市出身。川崎医療福祉大学卒業。東京造形大学大学院修了。中国国際ポスタービエンナーレ金賞、NY Graphis金賞、NY TDC、ラハティ、トヤマ、モスクワ、トルナヴァ、香港などの各種コンペ、東京TDC他入選。MADE IN JAPAN(仏)、All Gold of the World(露)、他多数出展。
Webサイト:http://kasugamaru-d.com

MELT

ずっと側に当たり前に存在していたものが

気付くといつの間にか周りから消えている。

人、想い、街、環境。

日々移り変わっていく様々な情景。

同じように見えているものもよく見ると1つ1つ違い、

日々自然にゆっくりと変化していく。

今あるものが「溶ける」ことで新たに生まれる世界。

●UVインクジェットと水溶紙について
UVインクジェット印刷する対象となった今回使用している水溶紙は、ゴミにならないようにと環境にも考慮され灯篭流しなどでも使用されている紙です。そんな機能紙の一種である水溶紙を使用しUVインクジェット印刷しています。
幾何学模様を作成し、水により溶かした事で新たな画が浮かび上がるようデザインしています。
インクが乗っかっていない場所が溶ける事により、紙の地が消え、水に溶ける事なく物質のように固まるホワイトインクが残り、これによりUVインクジェットの特徴と水溶紙としての機能を逆手にとった「紙が消えたインクで作られたポスター」が完成しました。
※今回は表現により薄い紙の薄い繊維を少し残すなどしています。

●テストについて
テストの段階では、UVインクジェットの特徴でもあるホワイトインクの強さ・水に溶けない強度がどの程度かを調べるために、ホワイト1層、2層、3層で実験しました。結果、1層だと水の流れによりインクが切れてしまい、3層だと丈夫でありますが厚すぎるのもあり、バランス良い2層を選択しました。
第二段階では、カラーインクの耐水性と強度をテストしました。
カラーインクはホワイトインクに比べかなり脆く、カラーインクのみの状態では水の流れに耐えうるものではなく、色を残す場合は必ずカラーインクの下にホワイトインクが必ず敷いてあげる事が必要であるという事がこの段階でわかりました。
今回のデザインのような細かい穴を開ける事において、ただ水につけておけば穴があくというわけではなく、若干の刺激を与えなければ上手く紙が溶けていきませんでした。
そこでデザインの作り方を調整し、より穴があけやすい、比較的安易になる方法を試行錯誤しデザインを作成しました。

●作品の取り扱いについて
通常の印刷物では当たり前にあるはずのベースとなる紙が消えているイレギュラーな状態で、インクのみでつなぎ留めている事から、非常に繊細な作品となっていますので、アクリルのケースにて保護しています。
アクリルケースを開けて実物を手にとる事はおすすめできませんのでご注意ください。

— 今回制作した作品のコンセプトを教えていただけますか?
宮前:作品名は“MELT”。水に溶ける機能紙である“水溶紙”を使う事で耐水性のあるUVインクのみを残していく作品で尚且つグラフィックも溶かす前、溶かした後が成り立つようなものとしてデザインしています。UVインクの特徴と使用する紙の特徴を捉え作品にしています。
— UVインクジェットの魅力はどんなところでしたか?
宮前:通常水性インクジェットだとコート・マット・セミグロス、場所によっては、画用紙っぽいものと使用できる紙が決められている中、ほぼ制限なく種類の紙やアクリル、鉄などの他素材でも印刷できる事に可能性が凄まじく大きく広がったと思います。
— 最後に、これからあなたが目指していることを教えていただけますか?
宮前:誰もチャレンジした事ないような事にもどんどんチャレンジして、グラフィックな表現はもちろん、印刷などについてもこれからも引き続き追求していきたいです。最近はチームで仕事をこなす事に大きな達成感と喜びを感じておりまして、いろんな分野の方ともご一緒していければと。また、地元でもある和歌山にも何かしら貢献できると良いなと思っています。

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