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わたしたちの視点

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IDJJJ3 Creators! 清水 彩香 作品紹介

清水 彩香(しみず あやか)
アートディレクター / グラフィックデザイナー
1988年神奈川生まれ。2012年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。good design companyとBLUECOLORを経て、2017年独立。
Webサイト:http://ayaka-shimizu.com/

— 今回制作した作品のコンセプトを教えていただけますか?
清水:UVインクジェット印刷は、紙になじまず、インクそのものがしっかりと存在感を示す特性を持っています。インクに「物質感」があります。しかし、インクが乗る紙もまた「物質」です。インクが「物質感」という、本来の役割である「色彩」以外の可能性を持った時に、インクと、そのインクが乗る紙との境界はどこなのか。今回は境界を探るために、紙をインクのように、インクを紙のように扱いました。境界はとても曖昧になりましたが、ギリギリのところでの差異が、それぞれの個性を一層引き立てる結果になったと思っています。その差異にこそ魅力が詰まっているので、ぜひ実物を見てもらえたら幸いです。


ポスターの拡大写真


01 色
色彩を持つ薄紙を用いた実験です。紙が重なり合うところ、紙と紙の間にホワイトインクが入ることで透けなくなっているところなど、お互いが繊細に影響し合っている様が観察できます。


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02 銀
同じ「銀」と言っても、輝きは、それぞれの表面の凹凸や、ニスの影響などで大きく変わります。ポスターの設置場所や、鑑賞者の位置によっても、その表情は無限に広がります。


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03 黒
奥まで続きそうな透明感のある黒、霧に包まれた闇に塞がれるような黒、更にそれらの重なりによって、インクと紙の境界をさまようような空間を感じることができます。


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04 白
最後に薄紙のベールをかけると、溶けるようになじみ、布のように美しい表情が生まれました。インクと紙の差異が、最も繊細な形で感じ取れるものになりました。

— UVインクジェットの魅力はどんなところでしたか?
清水:1枚単位で様々なチャレンジが出来るところです。今回は、ホワイトインク、ニス(マット・グロス)、疑似箔(金・銀)、紙の糊付けまで、全てUVインクジェット印刷機で行っています。
小ロットや大判の印刷が必要な時に、手段として利用されることが多いUVインクジェット印刷ですが、表現としての可能性はまだまだ秘められているように思います。1枚単位で試すことができるからこそ、これからも積極的にまだ見ぬ魅力を発掘していきたいと思っています。
— 最後に、これからあなたが目指していることを教えていただけますか?
清水:品性があってうつくしく、見たり使ったりした人が、前を向く活力を得たり、時には心を休めたりできるようなデザインの仕事に、一生の内に出来るだけ多く関わりたいです。最終の定着となる印刷はデザインの中でもとても重要な要素のひとつなので、技術の進歩にも常に敏感でいたいと思っています。

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