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わたしたちの視点

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IDJJJ3 Creators! 筒井 美希、工藤 大貴、白川 桃子 作品紹介

筒井 美希(つつい みき)
アートディレクター
武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。書籍や広報誌などのエディトリアルデザインを中心に、グラフィック、ウェブ、コンテンツ、映像、ワークショップなど、媒体やジャンルを問わず幅広いプロジェクトを手がける。著書に企画編集・デザインを行った『なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの新しい本。』(MdN)がある。
Webサイト:https://www.behance.net/tsutsuimd471

工藤 大貴(くどう だいき)
グラフィックデザイナー / サービスデザイナー
私立武蔵高等学校卒業 / 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。プロダクト・Webサービス・アプリケーションなどの新規事業立ち上げや改善プロジェクト、Web・アプリケーションのUIデザイナーを経験したのち、現在は雑誌などのエディトリアルデザイナー。
Webサイト:https://www.behance.net/kudod

白川 桃子(しらかわ ももこ)
アートディレクター / デザイナー
徳島県出身。静岡大学教育学部卒業。雑誌やムック、学校案内、教科書、広報誌など、紙媒体・Webを中心に幅広くアートディレクション・デザインを手がける。媒体の特性に合った柔軟なディレクション・デザインを得意とする。
Webサイト:https://www.behance.net/shirakawambcec

Michinori Aoki
フォトグラファー
横須賀出身。2007年株式会社ライト設立。STILL LIFEを主に撮影。
Webサイト:http://www.michinoriaoki.com

— 今回制作した作品のコンセプトを教えていただけますか?
筒井:アイデア出しをしている中で、3人とも質感やディテールへの興味がある点が共通していました。シャボン玉の透け感、蝶の羽の光沢や色合い、螺鈿細工の模様と光加減、トーストの表面の香ばしそうなザラザラなど。また、なるべく普段は印刷で扱えない素材に刷ることも試してみたいと考えていました。
ディテールの表現力が高い作品を作りたかったので、PhotographerのMichinori Aokiさんに撮影をお願いしています。どこをみても細部までスキのない質感表現の、すばらしい写真を撮影いただき、一瞬「もう普通に紙に刷ればよいのでは?」と思ってしまったほどです(笑)。
まずはテスト印刷を行い、幅広い素材に図柄をプリントを試しました。極薄のラップフィルム、タイルや木材、ゴムやスポンジ、貝殻を使ったシートや人工芝まで。ただ、想像以上にUVインクジェットの印刷力が高く、意外と普通の素材と遜色なく刷れてしまった(笑)ものも多かったです。
その中で面白くなりそうな組み合わせを3つ選び、作品として仕上げていきました。
白川:シャボン玉の透け感や艶感、立体感を印刷で表現してみたいと思い実験を重ねました。色々と透明感のある素材にテスト印刷をして検証したところ、刷る素材はフィルムラップに。実際に刷ると熱で素材が縮んで気泡が入ってしまったり、うまく透明感や艶感がでなかったりしたのですが、サイズやニスの調節で、儚げで繊細で不思議な質感に仕上がったと思います。ぎりぎりまで構成や素材が決まらずご迷惑おかけしましたが、トライアルをたくさんしていただき本当にありがとうございました・・・!

工藤:刷る対象を選ばずに白インクが使えるUVインクジェットの特性を活かすため、カメラマンの青木さんに撮影していただいたシーグラス(水辺で見つかる磨かれたガラス片)の写真を使用しました。鉄板の反射と白のコントラストで、単なる透過などとはまた違った形で水や透け感が綺麗に表現できたのではと思います。ベースとなる素材は当初アルミ材も検討したのですが、最終的には鉄板に。素材の光り方や濃さが少し違うだけで、印象が全く変わることに驚きました。

筒井:「黒い素材に黒いモチーフを印刷する」ということをやってみたいと考え、青木さんと相談してモチーフをカラスに決定。複数の素材にテスト印刷をした中で、一番面白い効果が出た反射シートを使用しました。このシートは入射光を光源方向に反射する性質を持っているので、光を当てた方向から見たときだけ、インクののっていない場所が光ります。ただの光ではなくシートそのものが持つ粒子感も現れるので、カラスの羽の質感や立体感がリアルに出て綺麗だなと。
反射しない状態での写真の見え方や光り加減を調整するため、白インクを挟んでみたり、ニスの濃淡を複数出したりして検証しながら仕上げました。ニスが濃すぎるとニス自体の光沢が強く出るため、反射したときの変化の度合いが弱まってしまうので、図柄が認識できるギリギリの薄さに調整していただいてます。

— UVインクジェットの魅力はどんなところでしたか?
全員:1枚から印刷でき、白やニスの精度も高く、試しやすいところがやはり良かったです。また、紙以外の個性的な素材を使うことも可能で、組み合わせ次第では想像を超えた表現ができる。印刷結果をみたときに、良い意味で裏切られていました(笑)。
また、深井さんをはじめみなさんの技術がすばらしいと思います。わたしたちのぼんやりとした「やってみたいこと」をどう印刷で実現すれば良いかのアドバイスをいただき、手法を数多くトライアルしてくださり、なんとか完成にたどり着くことができました。本当にありがとうございました。
— 最後に、これからみなさんが目指していることを教えていただけますか?
全員:身体性を刺激するような表現、特に印刷技術を使った視覚と触覚への刺激は今後も可能性があると思うので、定期的に挑戦する機会を作って行きたいですね。デジタルデバイスに囲まれて生活するようになった現代は、ともすると頭と目だけで判断してしまう場面が増えてきたように感じます。だからこそ頭でっかちにならず、身体でモノをとらえて感じる時間は、ますます大事になるのではないかと思います。

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