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わたしたちの視点

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IDJJJ3 Creators! 伊佐 奈月 × 西山 寛紀 作品紹介

伊佐 奈月(いさ なつき)
デザイナー
東京生まれ。2015年に武蔵野美術大学を卒業。同年、株式会社THINKAに入社。2017年、株式会社SHA立ち上げに参加。広告、ブランディング、エディトリアル、パッケージなど、様々な分野においてグラフィックを中心に担当。最近の仕事に、UNCONTROLLED TYPES by Plotter Drawing、360°BOOK、JNTO JAPAN BRANDING、YouFab Global Creative Awardsなどがある。2018年、ONESHOW Gold ×2, Silver ×3、NYADC Silver, Merit、D&AD Wood Pencil ×3、NY TDC Certificate of Typographic Excellence ×2、TOKYO TDC 入選。
Webサイト:http://www.shainc.co.jp/

西山 寛紀(にしやま ひろき)
イラストレーター
2011年多摩美術大学大学院博士課程前期グラフィックデザイン研究領域修了。書籍、雑誌、広告など幅広い分野でイラストレーションを制作。最近の仕事に、JINS「こどもレンズ」メインビジュアル、NHKラジオテキスト「まいにちドイツ語」表紙イラストレーション、パトリシア・ハイスミス「リプリーをまねた少年」装画(河出文庫)、TAKEBE LABメインビジュアルなど。 HB FILE COMPETITION 2018 副田高行賞。ONE SHOW 2017MERIT受賞。第33回ザ・チョイス年度賞入賞。ペーターズギャラリーコンペ2015鈴木成一賞次点など。
Webサイト:http://hirokinishiyama.com/

YOU SEE YOU

家に帰って、
暖かい部屋で今日1日を思い返す時
太陽が差し込むいつもの部屋で、
目を覚ます時
気がつくと鏡の中の自分をみつめていたりしませんか

あなたとあなたの間に

幸運の守り神の SHE
背中を押してくれる GO
誰かと過ごす時間が愛おしいものだと何度でも思い出させてくれる 2
見たことのない場所へと連れて行ってくれる far
その柔らかさと愛くるしさで表情を柔らかくしてくれる maa

希望や勇気や幸せをそっと写す鏡を置いて

you see you

ほら、優しい顔が映ってる


1. SHE


2. GO


3. 2


4. far


5. maa

— 今回制作した作品のコンセプトを教えていただけますか?
伊佐:コンセプトは「see=見る」です。好きな物や綺麗な物って、ずっと見ていたいし目のつく場所に飾ると思うんです。ポスターもそれと同じで、どうせ飾るなら見ていたくなるものを、何度も「見る」しくみを考えようと思いました。
素材は「鏡」。部屋にあると便利なだけでなく、部屋のあらゆるものの色を拾って写し込むので、その人の空間でだけ成り立つポスターが作れるのが魅力的だと思いました。
テーマは「yoo see you」と名付けました。ポスターに描いた5つのモチーフは、それぞれメッセージを発していて、見る人に希望や勇気や幸せを語りかけます。そのポスターを見ながら、そこに映る自分自身を見て、何かを考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいと思っています。
西山:この作品のコンセプトの核は伊佐さんからのご提案でした。「ポスター」は社会的な役割を持つメディアですが、この企画では家に飾って眺めるという私的な使い方をします。鏡という日用品(プロダクト)でありながら、ビジュアル×タイポグラフィでメッセージを観る人に伝えるという点ではグラフィックデザインの範疇にもあてはまる作品です。5種のテーマは観る人の生活や心境に寄り添うものになればいいなと思います。


制作初期段階の実験/シリーズのイラストをカラーにするか、モノクロにするかの実験。外界の色が写りこむので、イラストはモノクロにする。

— UVインクジェットの魅力はどんなところでしたか?
伊佐:どんな素材にも定着できるところです。当初、ガラスの鏡にプリントしたいとご相談したら、「反射が強すぎてプリンターのヘットが固まって壊れてしまうのでできません!泣」と言われてしまいましたが、それにほぼ近いミラーPETという素材を提案していただいて、ほぼ鏡のような素材にプリントをする事ができました。(いわゆる雑誌のおまけで付いてくる歪みまくりの鏡ではなく、ほぼ普通の鏡です。)
西山:白い色も盛ったりできるという点ではシルク印刷にも似ていますね。印刷の表面の質感に差を作る(グロス/マットなど)も魅力的でしたし、印刷の濃度を〜%とコントロールしながら印刷できるのも正確さもとても頼もしく感じました。


制作初期段階の実験/インクの透明度を駆使することで、モノクロの中でもレイヤー感を出せるかの実験。

— 最後に、これからお二人が目指していることを教えていただけますか?
伊佐:日々新しい技術が生まれ、今回のような面白いプリントができるようになったり、プログラミングやCGでいままで作れなかったものが表現できるようになったり、かと思えば伝統的な手仕事が圧倒的な完成度のある物を生み出したりしています。
デザイナーという仕事をしていると、どうしても一日中机の前で作業をしていますが、周りには、自分の知らない世界がたくさんあるので、分野を問わずに様々な方達と関わらせてもらって、自分の領域を超えた面白い物を作っていきたいと思います。
西山:視覚的なエンターテイメントに関わる技術は現在進行形で進化し続けています。とてもすばらしいことだと思います。進化した技術を恩恵を受けつつも、それを本当に良い意味で活かすには、「こういうものがつくりたい!」という純粋な欲求あってこそだと思います。その欲求は、普段何を感じて生き、どういうものに心を動かされたかによって育まれるので、素敵だと感じたものには積極的に関わっていきたいですね。
物質として形あるものを作る者としては、観る人にとって心地よく、心をいきいきとさせながらも、一過性に留まらない強度を持った作品を作っていきたいと思います。

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